たまたま「デロイトトーマツ」からちょくちょく来る冊子にこのテーマがあったので、本日は頭の整理を含めて、この件を述べたい。
1.発生の背景
いま流行のM&Aでは、巨額な金額(時価)で対象会社(事業)を買うので、その会社・事業の純資産簿価との差額が「のれん」という無形の資産に位置づけられる。実態はないから差額を生める勘定科目ですよね。とはいえ、買い手は将来のブランド力を期待して高値を出して買うので、その前払いという性格もあるのでしょうね。
2.「のれん」の会計上の取り扱い
日本の会計上は20年以内の定額償却で費用化していきます。とはいえ、20年が監査法人に認められるには、なかなかハードルが高いですね。10年が関の山、だいたいが5年でしょうか。
差額が逆の形に出た場合は「負ののれん」というものが現れます。これについては、一括で「特別利益」に計上するようです。
3.「のれん」の税務上の扱い。
もともとこの概念はなかったようだが、2006年に「資産調整勘定」「負債調整勘定」が創設されたみたい。会計の考え方との融和を目指したようだ。
会社が非適格合併等をしたときは、時価でやりとりするため、純資産簿価との差額が生じることになる。この差額を「資産調整勘定」「負債調整勘定」として考えて処理していくことになるようです。もし「営業権」が含まれるならそちらは区別していく必要があるみたい。
基本的には会計上の「のれん」と同じ金額になると思うのですが、税務では費用として認められない引当金などがあると、会計上の純資産簿価と税務上の純資産簿価とに違いが生じるので、結果として「のれん」の金額が違うこともあるようですね。
ともあれ発生した「資産調整勘定」「負債調整勘定」は5年で損金・益金になっていく。期中での取得でも1年分を処理できるようです。
<事例>をみていくと・・。
4.連結決算で「のれん」が出る場合。
当社が対象会社Aを100円で100%の買収した場合、対象会社Aの純資産30円との差額が、連結決算上でののれんとして出てきます。これが「連結のれん」ですね。
当社のB/Sには単に関係会社株式100円が載っているだけなので、費用になることもなく単体では償却・費用化できないという悲しいことになります。
連結決算上だけで費用(SGA)が出てくる感じですね。となると、TAXメリットがとれません・・・・。
この対策として、対象会社Aと合算して税務計算する「連結納税」ができればよいのですが・・・。
連結納税するときには、対象会社Aを時価で評価替えしてから合算するので、差額の70円を「自己創設営業権」として認識すると、差額70円は5年にわたって費用化されるので、TAXメリットをとれますね。
(とはいえ、連結子会社が多いと連結納税の事務負担が大変なのですが)
5.事業譲渡で発生したのれんの場合。
こちらは事業の時価を「のれん」として計上するので、5年で償却できますので単体でTAXメリットを得られます。
6.結論
連結のれんは単体での税務メリットをとれないので、M&Aするときは事業譲受するほうが、単体での税務メリットがとれるので、そちらを選択できるように相手との交渉をしたほうがよい。
とはいえ、売り手(個人)は事業譲渡ならば、受け取り収益が総合課税で高税率の所得税を課せられるため、避けたいと考えます。お互いの主張が相反しますね。
M&Aはテクニカルではなく、交渉につきるということです。