収益認識基準の開示
収益認識基準が導入され各社の開示がでてきたので見てみよう。
1.導入前の注記 (セガサミー)
(未適用の会計基準等)
当社及び国内連結子会社
・「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準委員会 2020年3月31日 企業会計基準第29号)
・「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準委員会 2020年3月31日 企業会計基準適用指針第30
号)
(1) 概要
国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、2014年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic606)を公表しており、IFRS第15号は2018年1月1日以後開始する事業年度から、Topic606は2017年12月15日より後に開始する事業年度から適用される状況を踏まえ、企業会計基準委員会において、収益認識に関する包括的な会計基準が開発され、適用指針と合わせて公表されたものです。
企業会計基準委員会の収益認識に関する会計基準の開発にあたっての基本的な方針として、IFRS第15号と整合性を図る便益の1つである財務諸表間の比較可能性の観点から、IFRS第15号の基本的な原則を取り入れることを出発点とし、会計基準を定めることとされ、また、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮すべき項目がある場合には、比較可能性を損なわせない範囲で代替的な取扱いを追加することとされております。
(2) 適用予定日
2022年3月期の期首より適用予定です。
(3) 当該会計基準等の適用による影響
影響額は、当連結財務諸表の作成時において評価中です。
2.導入初年度 (例は全部セガ)
①経過措置
過年度は修正せず利益剰余金で調整して、進行年度に引き継ぐ。
②会計方針注記。
(会計方針の変更)
(収益認識に関する会計基準等の適用)
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準委員会 2020年3月31日 企業会計基準第29号。以下「収益認識会計基準」という。)等を当第1四半期連結会計期間の期首から適用し、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識することといたしました。
これにより、一部製品のコンテンツ更新権の販売について、従来はコンテンツ更新権の販売時に一時点で収益を認識する方法によっておりましたが、財又はサービスに対する支配が顧客に一定の期間にわたり移転する場合には、一定の期間にわたり収益を認識する方法に変更しております。また、一部商品の消化仕入れ販売に係る収益について、従来は総額で収益を認識しておりましたが、顧客への財又はサービスの提供における役割(本人又は代理人)
を判断した結果、純額で収益を認識する方法に変更しております。
収益認識会計基準等の適用については、収益認識会計基準第84項ただし書きに定める経過的な取扱いに従っており、当第1四半期連結会計期間の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を、当第1四半期連結会計期間の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用しております。
なお、当第1四半期連結累計期間の損益及び利益剰余金の当期首残高に与える影響は軽微であります。
収益認識会計基準等を適用したため、前連結会計年度の連結貸借対照表において、「流動資産」に表示していた「受取手形及び売掛金」は、当第1四半期連結会計期間より「受取手形、売掛金及び契約資産」に含めて表示することといたしました。なお、収益認識会計基準第89-2項に定める経過的な取扱いに従って、前連結会計年度について新たな表示方法により組替えを行っておりません。さらに、「四半期財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準委員会 2020年3月31日 企業会計基準第12号)第28-15項に定める経過的な取扱いに従って、前第1四半期連結累計期間に係る顧客との契約から生じる収益を分解した情報を記載しておりません。
③分解情報(セグメント) セグメント情報の下にあるね。
④表示科目(契約資産、契約負債)
2021年6月第1四半期 決算上の留意事項|EY新日本有限責任監査法人
配当のパターン(資本剰余金からの配当)
配当を検討するときに、一般的には利益剰余金からの配当が普通だけど、配当可能利益が無い場合は、資本剰余金からの配当を検討すべきです。
配当可能利益の計算は、簡単には以下になります。
●決算日の総資産100ー負債総額50―資本金等10=配当可能40
第7回:分配可能額の算定|会社法(平成26年改正)|EY新日本有限責任監査法人
この範囲で配当を実施すれば問題ないのですが、配当を複数回して配当可能利益がなくなった場合には、配当可能利益を増やせばいいのですが、株主総会の決議が必要です。
●中間配当、いつでも可能(取締役会決議)
資本剰余金からの配当は、利益剰余金からの配当と異なり、「資本の払い戻し」部分と「利益の払い戻し」部分に区分する必要があります。
「資本の払い戻し」部分は、配当の受け取り側は「みなし譲渡損益」となり、譲渡所得として計算されます。(それ以外は配当所得)
「資本の払い戻し」を計算するにあたり、税務申告書別表5(1)から一株株価を算出する必要がありますので、少し厄介ですね。(株主側は@●●円しか源泉徴収票に記載されており、それで判断できます)
詳細は別途。
経理迅速化に向けてのシステム構築
経理は月次のルーチン作業が多い。従って経理システムに投入する部分はシステム化して自動仕訳に繋げるのが望ましい。
事業 → 集計化 →経理システム →B/S P/L出力 →次の経営判断へ
この集計化については各法人ではエクセルを利用していることが多いのではないでしょうか。
エクセルは素人でも作りやすいが、俗人化しやすい(マクロがよい例)
あとデータが多いと固まり易い。
ではデータを固まらないように、多量のデータを扱うにはどうすればよいか。
著者はKINTONEを使っている。(サイボーズ)
これは多量のデータを格納してDB化して、必要データの抽出がしやすい。
(たとえば、従業員の交通費やカードデータなど)
VISAなどのカードデータを自動取得し、DBに自動格納し、項目により勘定科目を自動紐付けして、会計システムに投入する。
ちなみに経費データを電子帳簿保存法申請で紙でなくデータで保管すると、倉庫が紙であふれることはない。
人件費データならば人事給与計算結果を個人別、部署別にDBに格納し、会計システムに投入する。もちろん、会計士システムと同じ会社なら自動連係するが、他社の人事給与システムでも、KINTONE連携すれば容易になる。
預金データも銀行からVALUXで自動取得して、KINTONEに格納し、入金データならば取引先マスターと紐付けて売掛入金処理を自動仕訳できる。
ボタン一つで決算がおわるなら、経理作業に付加価値はないので、経理マンは作業でお金を貰うのではなく、経営判断でお金を稼げるようになる。これが本来の経理マンのあるべき姿かと思う。
このような姿を進めるにあたりお手伝いしていきたい。
KAM(Key Audit Matters)についての各社対応状況
2021年3月期から監査報告書上に「監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters:KAM)」の記載が強制適用になり、3月決算の開示内容が出そろった。
意義としては、「監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項をいう。監査上の主要な検討事項は、監査人が監査役等とコミュニケーションを行った事項から選択される。」(監基報701第7項)とのことで、各社の監査人が何に重きを置くかで内容が違ってくるかもしれない。
見積の不確実性が高い内容は、このKAMで議論される内容になると思います。
では、各社の開示を見ていこう。
■SBG(21/3月期) → 収益認識基準とのれん評価がメイン
1.通信サービス契約におけるIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の適用上の重要な判断及び見積り及び収益計上の前提となるITシステムの信頼性
①通信サービス契約におけるIFRS第15号の適用上の重要な判断及び見積り
②収益計上の前提となるITシステムの信頼性
2.重要な組織再編及び企業結合
①Zホールディングス㈱の子会社化の会計方針の決定
②㈱ZOZO株式取得のPPAの適切性
③㈱ZOZO取得ののれん評価
3.単体ではLINEのPPAへの記述(P242)
LINE㈱取得の会計処理と取得対価配分(PPA)における公正価値の適切性(注記3.重要な会計方針(2)企業結合、注記6.企業結合、注記14.のれん及び無形資産)
■DeNA(21/月期) →プロ野球における収益の不確実性とのれん評価(P158)
P162にはDTAの評価についても記載。
スキルマトリックスの開示について(招集通知)
招集通知の開示に役員別のスキル開示が必要になるようです。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73155790S1A620C2TB1000/?unlock=1
スキル・マトリックについては、以下も参考になります。
株式時価総額トップ100企業の半数超の企業においてスキル・マトリックスが開示されていることが判明しているそうです。2021/6時点。
名前だけの役員はなかなか難しくなりそうですね。
外形標準課税(事業税)のワナ
決算期末前には無償増資(利益剰余金→資本剰余金への振替え、資金移動なし)で資本金等を1億円以上にすることで、外形課税が下がるメリットがあるかもしれない。
ご存じのとおり、資本金1億円を超えると外形標準課税(事業税)がかかるが、法人税率が下がるので総合的にみて、課税額が下がるメリットもあるという不思議な現象が発生する。(外形標準課税適用法人については所得割の税率が大幅に引き下げられるため)
但し、利益剰余金が減るので配当可能額が下がるので、対株主に対しての説明が必要にもなります。。
例としては以下をご参照ください。
https://direction-tax.com/post-779/
また、外形課税は資本金、人件費にも税金がかかるため、赤字で所得がなくても、税金が発生することもあり、将来計画が安定して黒字であるという条件も見ないといけません。
期末前にはぜひご検討ください。